環境調整で、個々の学ぶ力を引き出す

なぜ、学習を続けることが難しくなるのか?
調査や実験で、その潜在的な要因を探っています。

こんな現象に心当たりはありませんか?
最初はやる気があったのに、気づくと勉強が続かない。本人も「やらなければ」と思っているのに、なぜか行動に移せない...
私の目指す研究
学習者が本来持つ「学ぶ力」を阻害する見えない要因を調査や実験で探り、誰もが自然に学び続けられる環境づくりに寄与すること

研究アプローチ

1
現象の観察から
インサイトを得る
2
調査・実験で
検証
3
実践的
解決策の提案

学習継続の「見えない壁」

学習継続困難を表現した研究イラスト

*イラストは、ほらぱれっとさんによる。

🌟
1日目:やる気満々でスタート
「今度こそ続ける!」新しい参考書を開き、計画表を作成。目標に向かって意欲的に取り組み始める。
😐
数日後:少しずつ億劫に...
「今日は疲れたから明日やろう」最初のやる気が少しずつ薄れてくる。習慣として定着する前に、取り組みが不安定になってくる。
😔
1週間後:気づけば避けている
「やらなければ」と思いながらも、なぜか机に向かうことができない。自分でも理由がわからない。
この「見えない壁」は、学習者だけの問題なのでしょうか?
学習者の自然な学びを支える環境づくりを、新たな視点で捉え直す必要があるのではないでしょうか?

探求したい問い

こんなことを、調査や実験を通じて少しずつ明らかにしていきたいです。

なぜ幼稚園では自然に学べるのに、小学校以降「勉強嫌い」が増えるのか?
学習環境の変化が子どもの学習意欲に与える影響を調査します。
図書館やカフェで勉強がはかどる気がする場合があるのはなぜか?
環境要因が学習意欲や注意制御に与える効果を実験的に検証します。
デジタル技術は学びをより自然にできるのか、それとも阻害するのか?
デジタル環境で起こりがちなネガティブな現象から、持続可能な学びを考えます。
教師や保護者は、子どもをコントロールしようとしすぎていないか?
過度な管理・指導が子どもの自発的な学びに与える影響を検証し、適切な支援のあり方を探ります。
我々は何に追い立てられているのか?
現代社会はなぜこれほどまでに忙しく、ゆとりをもつことが難しい感じがするのか、どうすれば解放されるのか考えます。
「道草」とは何か?
目的をもたずにいられることの価値を再考します。

これらの問いの根底にある関心

すべての問いは「学習者の本来持っている学ぶ力を、どうすれば損なわずに支援できるか」という共通の視点から発しています。

研究アプローチ

学習継続を阻む潜在的な要因を複数の観点から探り、
実践的な解決策を見つけ出します。

🔍

見えない要因の発見

学習者自身も気づかない潜在的な要因—注意の散漫、無意識的な回避行動、環境の影響—を調査や実験を通じて明らかにします。単なる「やる気の問題」では説明できない、より深いメカニズムに注目します。

データで読み解く学習行動

行動観察や記録を通じて、学習継続のパターンを数値化・可視化します。いつ、どのような状況で学習が困難になるのかを、客観的なデータから読み取ります。

🌱

自然な学び環境の設計

無理な努力に頼らず、学習者が自然に学び続けられる環境要因を探求しています。小さな工夫や仕組みで、学習への取り組みを持続可能にする方法を提案します。

研究キーワード

同じような問題意識を共有していただける先生方や、
保護者・学生の皆さんとの出会いを楽しみにしています。

🔸
心理学的概念
学習者の心理的・認知的プロセスに関するキーワード
注意の転導性
注意の対象が比較的容易に切り替わってしまう傾向
注意残留
過去のタスク等への注意や思考の一部が残り続ける現象
自己制御困難
やるべきことがわかっていても自分では制御できない状態
無意識的過程
本人が気づかないうちに働いている心理的メカニズム
学習性無力感
失敗体験の蓄積により「何をしても無駄」と感じる状態
行動嗜癖
特定の行動を繰り返さずにはいられない状態(SNS・AI依存等)
📚
教育環境・学習支援
学習環境の設計や継続支援に関するキーワード
学習環境デザイン
学習者が自然に学び続けられる環境の設計手法
誘引性付加物
興味を引くが学習内容と関係ないように思われる要素
持続的課題
長期間にわたって継続する必要がある学習活動
注意の社会的調整
他者との関わりを通じて注意をコントロールすること
発達的トレードオフ
ある能力や機能の獲得・向上に伴って、他の能力や機能が制約される、または失われること
受容的態度
一人ひとりの学習者をありのまま受け入れ、耳を傾けようとする教育的態度
📊
理論・モデル・手法
考慮することの多い理論的枠組みや考え方
ハードルモデル
学習継続を阻害する「ハードル」の概念的モデル
注意経済
限られた注意資源の配分と競合に関する理論
共制御理論
個人と環境が相互作用しながら行動を調整する理論
無功用の功用
意識的な努力や働きを加えないことの価値
ルーカス批判
過去の観測データから推察される因果関係をもとに人為的な介入を行っても、効果がない場合があることについての理論
包括的アセスメント
家庭環境や社会・経済的要因、身体の状態なども含めて当事者を理解しようとする手法

執筆したもの

主研究

  • 2020
    学習アプリにおけるコミュニケーション機能による学習行動の継続促進効果およびその個人差
    澤山 郁夫・三宮 真智子・寺澤 孝文(2020).情報コミュニケーション学会誌,15, 13-18.査読有り
  • 2019
    誘引性付加物(Seductive Details)の呈示効果の個人差に関する実験的検討
    澤山 郁夫・三宮 真智子(2019).教育システム情報学会誌,36(3), 177-189.査読有り
  • 2014
    一問一答式eラーニングにおける学習者同士の繋がる仕組みが学習者の学習量推移に与える効果
    澤山 郁夫・寺澤 孝文(2014).日本教育工学会論文誌,38(1), 1-18.査読有り

副次的研究・共同研究(抜粋)

詳細なリストはresearchmapをご参照ください

  • 2025
    小学生における学年別にみた手書きとタイピングによる日本語記述速度の差異
    澤山 郁夫・海﨑 孝斗・永田 智子・藤原 雅弘(2025).日本教育大学協会研究年報,43, 27-37.査読有り
  • 2024
    授業中の子どもの「気になる」行動に対する小学校教員の介入意識の規定因
    澤山 郁夫・高橋 彩・丹治 敬之(2024).LD研究,33(1), 70-80.査読有り
  • 2023
    日本におけるオンライン調査の回答端末と自由記述量の関係
    澤山 郁夫・永田 智子・海﨑 孝斗・藤原 雅弘(2023).日本教育工学会論文誌,47(Suppl.), 153-156.査読有り
  • 2022
    データサイエンティスト必須スキルの有用性認知に関する実態調査
    澤山 郁夫・森山 潤(2022).教育情報研究,38(2), 41-52.査読有り
  • 2018
    社会科における生徒の苦手知識を一人ひとり可視化する試み
    澤山 郁夫・髙松 昭彦・寺澤 孝文(2018).教育情報研究,34(1), 35-45.査読有り
  • 2018
    大学生の独り言的ツイートは独り言なのか:発話傾向との関連から
    澤山 郁夫・三宅 幹子(2018).パーソナリティ研究,27(1), 31-41.査読有り
  • 2015
    大学生におけるTwitter閲覧頻度と同調志向及び自己関連情報の収集に関わる心理特性との関連
    澤山 郁夫・三宅 幹子(2015).パーソナリティ研究,24(2), 137-146.査読有り

書籍

  • 2025
    HADによる心理統計入門:Excelではじめるデータ解析
    澤山 郁夫・上田 紋佳・杉澤 武俊(2025).東京図書
    [Amazon]
  • 2021
    第1章 1変数・2変数の記述統計
    澤山 郁夫(2021).山田 剛史・川端 一光・加藤 健太郎(編著).Progress & Application 心理統計法 サイエンス社
    [Amazon]

プロフィール

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所属

兵庫教育大学 先端教職課程カリキュラム開発センター(准教授,2022年4月〜)

🎓

学位

博士(人間科学) 大阪大学(2021年)

学位論文:「Web教材における学習行動の継続を目的とした呈示物についての実験研究」

📋

資格・免許

心理 公認心理師(第43834号)
調査 専門社会調査士
教育 幼稚園教諭専修免許状
小学校教諭専修免許状
中学校教諭専修免許状(英語)
高等学校教諭専修免許状(情報,英語)
特別支援学校教諭一種免許状(知・肢・病)

こんな場所、あったらいいな

個人的にこんな場所があったらいいなと思っています。

自由で安心できる空間
のびのびとした雰囲気
自然な学びの場

*画像はDALL-E 3で生成

ゼミについて

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学部

2025年度以降の入学生の内、技術・情報グループに所属する学部生のゼミ指導をお引き受けすることができる予定です。

大学院

2025年度現在、兵庫教育大学 大学院学校教育研究科 生活・健康・情報系教育コース(修士課程)において、希望する院生のゼミ指導を行っています。

また、兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科(博士後期課程)については、副指導教員をお引き受けすることができます。